からあげ専門店が急増しているのはなぜ?急成長も行く末は韓国の二の舞か?

近頃、近くのラーメン屋さんの一角で唐揚げ屋さんをやっているお店に気付きました。そういえば、唐揚げ屋さんはめちゃくちゃ増えたような・・・。みなさんの身近でも、チェーンのから揚げ屋さんが増えていると思いませんか? 今回は、その理由を探っていきたいと思います。

Sponsored Link

この1年で店舗数は40.2%も増加で成長し続けた唐揚げ市場だが

一般社団法人「日本唐揚協会」によると、2022年4月時点の唐揚げ専門店数は全国に4379店舗(推定)あり、12年の450店舗から10年間で10倍近くに急増しています。

また、2021年4月時点での全国の唐揚げ専門店の数は推定3123店舗であったことから、この1年で40.2%も伸びたということになります。

この数値を見ても、新型コロナウイルスの発生当初にとどまらず、唐揚げブームはいまだ健在であり、着実に拡大しているようにもみえますね。

一方で、足元では新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置の終了などを受けてテイクアウトの特需も落ち着きを見せ、からあげ業界は正念場をむかえているようです。

新規開業へのハードルが低いから揚げ専門店

から揚げといえば、家でも作れる家庭料理の定番メニューですよね。しかしながら、油で揚げるという工程が当然発生するため、調理に少々手間がかかるうえに、揚げた後の油の処分も面倒、それに調理後の部屋の臭いも気になる……ということで、このところは外食の需要が増えています。

いわゆる専門店といわれるから揚げのテイクアウト店は、2010年代序盤から全国的に増え始め、そこに大手外食チェーンも参入をし始め、現在のような活況に繋がっているようです。

から揚げ店は個人で始めるといったケースでも、フライヤーなどの最低限の厨房機器を揃えれば開業でき、さらにテイクアウト店となれば店の広さもあまり問われないので、同じ立地でも一般的な飲食店と比べれば物件を安く借りれるなど、とにかく開業に至るまでの金銭的なハードルが低いです。

さらにテイクアウトのから揚げ専門店であれば、開業にあたって「食品衛生責任者」の資格は必要なものの「調理師免許」は不必要と、その手のスキルの面でもハードルが低いので、繁盛するかどうかは別の話ですが、たとえ料理の心得がほとんどなくても、多少の資金があれば始めることができます。

実際、これらとほぼ同じような理由で、お隣の韓国ではかなり以前よりいわゆる“チキン屋”が多いのだといいます。若者の就職事情が異常に悪化している韓国では、公務員や有名企業など安定した職に就けるのは一握りで、そこからあぶれてしまった層が食べていくために仕方なしにチキン屋を開業するといい、現地では「チキン屋か餓死か」という言葉もあるのだとか。

ちなみに、そんな韓国におけるチキン店の数ですが、コロナ禍に突入した2020年のデータによると2万7,667店も存在するといい、前年と比べると1,980店増えているといいます。日本のほぼ半分ぐらいの人口である韓国でそれだけのチキン店が存在するのであれば、日本のから揚げ専門店3,100店舗という数字も、まだまだ伸びる余地はありそうな気もしなくはないですね。

Sponsored Link

ワタミ「から揚げの天才」はキッチンカー・コンテナ店舗に取り組み

居酒屋大手のワタミでは、からあげと玉子焼きを販売する「から揚げの天才」を展開。低投資で出店できるフランチャイズモデルを確立したことで、コロナ禍初期に積極的に出店しました。2018年11月に1号店をオープンし、2年7ヶ月後の2021年7月に100店舗を達成。これは日本の外食チェーン最短の記録だといいます。2021年10月に112店舗に到達して以降、一部店舗の閉店もあり100店舗を割り込みましたが、2022年6月にはキッチンカーの2店舗目、コンテナタイプの8店舗目をオープンするなど、さらに出店しやすい新モデルでの取り組みを進めているようです。

「から好し」取り扱い「ガスト」は約1300店舗に

すかいらーくレストランツのからあげ専門店「から好し」店舗数は88店舗(2022年3月31日時点)。ただし、同社が展開するファミリーレストラン「ガスト」の「から好しのから揚げ」取扱店舗は約1300店舗。2020年7月から取扱店舗を増やし始め、現在ではほぼすべての「ガスト」で「から好し」のからあげを扱っているようです。

Sponsored Link

「からやま」着実に店舗数を拡大

とんかつ専門店「かつや」などを展開するアークランドサービスホールディングスのからあげ定食専門店「からやま」「からあげ縁」は、着実に店舗数を伸ばし、2ブランド合計で167店舗(2021年12月時点)。

ファミリーマート「ファミから」は“1週間で540万個”の好調

ファミリーマートでは5月末、店内で揚げるからあげの新シリーズ「ファミから」を全国発売しました。従来の商品「和風からあげ」の約30g×4個入り税込200円に対し、「ファミから」はからあげ専門店で主流の1個約50gにサイズアップし、1個単位、税込98円で販売しています。発売後1週間で販売個数540万個を突破するなど、滑り出しは好調なようです。

ブラジル産鶏肉は1か月で卸値が約2割上昇

ただ、そんなから揚げ専門店にもここに来て逆風が吹いており、なかでも大きいのがやはり原材料の高騰。国内の輸入鶏肉の7割を占め、外食産業で使われることの多いブラジル産鶏肉だが、ウクライナ危機が長期化している影響もあり、今年3月の1か月間で卸値が約2割上昇。約10年8カ月ぶりの高値を付けています。

また、韓国のチキン屋の数と比べれば少ない日本のから揚げ専門店の軒数ですが、ワタミによる「から揚げの天才」や、すかいらーくグループの「から好し」など、大手飲食チェーンがこぞって参入している状況となれば、個人店や小規模チェーンも含めてのサバイバル競争が今後さらに激化するのは明らかです。しかも先述の韓国のチキン屋チェーンも、ここに来て日本への出店攻勢を強めているといい、さらなるカオス状態に陥る可能性も大いにあります。

昨今のから揚げ専門店の盛り上がりを「韓国と同じ道を辿っている」と、韓国のチキン店になぞらえる声も少なくないいっぽう、から揚げ専門店の今後に関しては「高級食パンやタピオカと同じ道を辿る」といった悲観的な見方が多い印象なのです。

現に最近では、から揚げ専門店のなかでも「変わった名前の店」が出ているとの指摘も。他店との差別化に躍起といったところですが、実は高級食パンブームの際も、この手のネーミングの店が続々と登場するも、その後大量閉店してしまったという出来事があり、非常に危険な兆候ともいえそうです。

まとめ

コロナ禍のテイクアウト需要で再評価された国民食「からあげ」。市場全体として激しい競争があることは確かですが、掘り下げて状況観察していけば、ビジネスチャンスを見つけることはできそう。

コロナの感染者数の状況はまだまだ予断を許さない状況が続くものの、以前のような日常が徐々に戻りつつある今後こそ、その正念場なのかもしれません。

広告